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No.7

 今回は個別で関わらせて頂いているOさんの事例を紹介させて頂きます。
Oさんは介護サービスセンターに併設されている高齢者マンションにご夫婦で入居されていましたが、平成20年に奥様を亡くされ一人暮らしとなりました。寂しさ故か他の利用者様との関わりも減り、食も進まず、ひとりでぽつんと過ごされる毎日が続いていました。そんな元気のないOさんをスタッフが気遣われ、何としても、もう一度Oさんに生きる息吹を吹き込みたい、という強い願いで個別セラピーが開始となりました。
 初回はカノンがOさんの「心の扉」をノックしました。硬い表情、堅く結ばれた唇が、閉ざされた心の扉の重厚さを物語っていました。カノンをOさんの膝に乗せ、一緒に撫でながら、Oさんとのラポール=出会いを模索します。カノンはOさんに毛をわしづかみにされても黙って膝の上に伏せています。
「Oさんは犬を飼われたことはありますか?犬はお好きですか?」
「Oさんは赤ちゃんのお世話をされたことがありますか?犬もよく似ていてね、優し く撫でると喜んでくれて…」
セラピストのどんな問いかけにも表情の変化はなく、気が向くとかすかにうなずいてくれる程度の反応がOさんの精一杯の自己表現でした。少し乱暴でぎこちないOさんの手がカノンをなでたり、首輪やバンダナをひっぱたりすることも、Oさんなりの関心の現れと捉えじっくり関わる覚悟を決めた初回セラピーでした。
 4月も半ばを迎える頃、遅咲きの桜が一気に花開いたある日、春を愛でる「お花見セラピー」を計画しました。前日に下見をして、公園までの距離や段差、歩道幅を確認、施設側の了解も得ました。当日はパールを車いすの左側につかせ、Oさんと私でリードをしっかり握って散歩しました。街角の春をいっぱい感じて頂こうとゆっくり進みました。時折パールが脇見をして止まるとOさんは優しく諭すように背中や頭をポンポンとタッチされてとても感動的でした。公園には小さいお子さん連れのお父さんやお母さんもおられ、パールとOさんを中心に小さな輪ができました。1.jpg家族の縮図のようでもあり、実子のおられないOさんですが遠慮がちに少し手を上げて親子連れに挨拶される様子は感慨深く、きっと過去の実体験も重なっていたのではないでしょうか。奥様を亡くされ長い間心も身体もお部屋に封印してたOさんですが、同じ年月をかけゆっくり心を癒して頂けたらいずれは表情も言葉もついてくるものと確信しました。洋服に散った花びらをはらうことさえ惜しまれて帰途へのお土産にしました。

アニマルセラピスト 石川 薫

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